breathdiary

                       

   

曇り空の下の彼岸花

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  昨日のお月様 明るすぎて雲の厚みを壊して,異次元がひょっこり現れたみたい。

 

新幹線に乗った。博多駅もすっかり改装が終わり、新しい都会のセンスに染まっている。2階の新幹線用の緑の窓口もホテルのロビー風な落ち着き。 新山口駅までわずか1時間の旅。  待合室もウッディーで良い感じ。 ホームはさすがに無機質感が漂うけれど、キオスクがコンビニみたいなガラス張りで上に灯る明かりがお洒落だった。

何年かぶりの新幹線。前回はもう廃止されたレアものになった古い型のこだま号。                  今回は 鼻のながい顔した流線型。700系とやらは、重厚な椅子で乗り心地がいい。

スピードがあるぶんだけ、駅を乗り越さないかと心配ばかりであっという間に着いた。

駅では義理姉の3番目の兄夫婦が出迎えてくれて、そこからまた車で山中を1時間半ひた走って、横浜の兄嫁の実家のある岩国市の病院まで94歳のお父様を見舞いに。

天気は気持ちと寄り添うようなライトグレーの雲に覆われている。陽射しは隠れて、暑さも免れ、なにか時間が止まったような感じがする。 道脇を栗の並木が埋めている。岩国市美和町のがんね栗という名産品だそうだ。以前は丹波くりとも言われていたとか。

どんよりした風景の中で突如 あまりにも鮮やかな朱色が ちらほらと両脇に見え始めた。 まもなくすると、田んぼの上の草むら一面に彼岸花がびっしりと咲く光景が・・。花なら、和むはずなのに、こればっかりは、名前からしてちょっと怖いだけあって、ましてあと半年もたないと医師が言う人のもとへと向かっている。

お父様は軍人さんだった方で、律儀できっちりした話し方をされる。毎年の年賀状もいまだに送ってくれたり、7月の水害を心配して自ら電話をかけてこられたりした。 ついこの間まで、83歳の奥様と二人暮らしを貫いて古い元の家で生活を送っておられる。 たまたま便検査で癌がわかり、いきなりあと、半年だろうなんて言われたりして、驚いてしまった。

ベットに近づくと、手が自然に伸びてきて、私は思わずその骨太のしっかりた手を握り締めた。優しくて、実に穏やかな笑顔を見せながら、遠くからわざわざお越しいただいてありがとうと、ねぎらいの言葉としっかりした話ぶり。 

私は長男さんに対してはなんとも言葉がみつからないまま、せつない顔を見せるしかなかった。 その方も同じく一瞬泣き顔になるのをやっとこらえるので精一杯。

いくつになろうとも親の前では子供は子供だというのが見えた。

 

父親へ娘らしい感情を持って成長できなかった私はその分の代償で兄嫁のお父さんには憧れを感じずにはいられなかった。 会うのは最後だなんて決して思いたくない。